Tristan und Isolde

Osamu Sasaki
Wagner Ensemble
Date/Location
2 May 2015
Nihonbashi Opera Tokyo
Recording Type
  live   studio
  live compilation   live and studio
Cast
Tristan Jyunya Katayose [act 1,2]
Tadahiro Masujima [act 3]
Isolde Shoko Fukuda
Brangäne Naoko Hiradate
Kurwenal Daiki Katsumura
König Marke Yasunori Okumura
Melot Hiroyuki Namiki
Ein junger Seemann Hiroyuki Namiki
Ein Hirt Takamasa Horikoshi
Steuermann Ippei Mochizuki
Stage director Arisa Tachi
Set designer
TV director
Gallery
Reviews
opera.jp.net

日本橋劇場に《トリスタンとイゾルデ》を観に行ってきました。室内オーケストラ版(世界初演)で、このオペラの日本人だけによる初の全曲舞台上演です。 主催は「日本橋オペラ」という団体です。全三幕のオペラですが、聴きたい一幕だけ購入することも出来るという親切なチケット販売方法でした。中央区立日本橋公会堂(日本橋劇場)は客席数440、花道を作ることも可能という日本舞踊等の「和」の利用を想定して作られたホールのようです。2階席から鑑賞しましたがオペラ上演にも悪くない音響でした。2階席ロビーでは今回、公演チラシやプログラム(大変充実した内容でした)の表紙に使用されたニノ・カルミゼ作《トリスタンとイゾルデ》の絵画と、指揮の佐々木修氏に縁が深い奈良美智作の絵画が飾られていました。

オーケストラは舞台上に配置されています。弦が9名、管が8名にティンパニーとハープで計19名です。上手側に弦パート、下手側にそれ以外の楽器が配置され、中央の半円形のスペースが歌手のアクティング・エリアとなっています。指揮者は上手の弦楽器の近くに座っていました。舞台奥には中央から階段で昇って上手側に出入り出来る平台(ある程度の高さがあって上を歩ける台)が設置されています。 演出は、上から降りて来る何枚かのパネルと、舞台奥の幕と床への映写を中心におこなわれました。場面によって1階の客席を歌手の演技の場として使用したり、2階の舞台近くの席からも第一幕の船員達の歌を歌わせたりと、劇場全体を工夫して使っていました。第三幕の最後は、死んだメーロトとクルヴェナルが立ち上がり舞台奥の階段を昇り上手に向かってゆっくり歩いて退場、それに続いてイゾルデに誘われたトリスタンが彼女の手を取り同じ旅路に向かうところで幕となります。 音楽的に興味深かったのが室内オーケストラ版の編曲です(編曲は当日の指揮者でもある佐々木氏)。日本ではエレクトーンによる演奏、またはピアノに弦楽を足したりするアレンジのオペラ上演がよくありレベルが高くて驚かされることがありますが、今回は鍵盤楽器を使用していない小編成と、残響が少ないホールの音響が相まって、各楽器の音色がはっきり聴こえて来て面白かったです。いわゆる「トリスタン和音」などのワーグナー音楽の特徴も際立ち、長いオペラを厭きさせません。特に木管は演奏も充実し、オーボエや第三幕のソロで活躍するイングリッシュ・ホルンなど聴きごたえがありました。

歌手はイゾルデ役を歌ったのがこの「日本橋オペラ」の代表で公演監督の福田祥子。美しい舞台姿と強靭な声でした。トリスタン役は第一幕、第二幕が片寄純也。ワーグナーを歌うのに相応しい輝かしい美声で、第二幕第二場の愛の二重唱はイゾルデ共々素晴らしい表現でした。第三幕のトリスタンは升島唯博。ドイツでのキャリアが長かったテノールで、きれいな発音と音楽性で聴かせました。マルケ王の片山は立派な声のバス。クルヴェナルは柔らかい響きのバリトンで演劇的にも熱演。ブランゲーネの平舘はイゾルデを思いやる雰囲気が良く出ていました。若い水夫とメーロトを歌った並木は明るい美声で歌も良く、また牧人の堀越も同様に声も歌もとても良かったです。他の歌手達も好演。衣裳も男声陣のモノトーンを基調にイゾルデの鮮やかなドレスが印象に残りました。

music-tel.com

日本の首都東京の中心部で有名オペラを聴こう。日本橋オペラが遂に旗揚げ。このほど第1回公演としてワーグナーの代表作にして最大の難曲としても知られる「トリスタンとイゾルデ」が採り上げられた。(日本語字幕付きノーカット原語上演)。 佐々木修指揮ワーグナーアンサンブルの演奏。新鋭舘亜里沙の演出に加え、配役はイゾルデに福田祥子、トリスタンに片寄純也(1、2幕)と両主役に実力者を揃えた豪華布陣、会場には指揮者と縁のある人気ポップアート作家奈良美智の幻の若書きや今回の公演のために委嘱されたジョージア(グルジア)の女流画家ニノ・カルミゼの「トリスタンとイゾルデ」も飾られ、日本橋の地に総合芸術空間が現出。 舞台上に置かれたオーケストラは佐々木自身の編曲になる室内楽版による一菅編成(イングリッシュホルンやバスクラ入り)だったが、会場の規模も幸いし第1幕の前奏曲から過不足ない響きで楽しめ、弦楽器が右側に配置されたため、本場バイロイト同様第1ヴァイオリンが右に来たのも面白かった。佐々木は座っての指揮だったが相変わらず無駄なく合理的で的確な指揮ぶり。この劇場は本来歌舞伎上演などに使用されることが多いせいか、客席の通路を花道のように活用。水夫が2階席サイドで歌ったり、歌手は縦横無尽に動き回っていた。第2幕でも福田と片寄の名コンビが愛の二重唱で「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」の世界を熱唱。演出も終結のユニークなパントマイムなど独自性が光っていたが基本的にはオーソドックスなものでワーグナーの世界を逸脱せず好感が持てた。第3幕のトリスタン升島唯博はやや非力だったものの本場仕込みの丁寧な歌唱は充分存在感があり、3幕でのトリスタンは瀕死の重傷だけにこれでいいのだともいえる。ヒロイン福田は既にブリュンヒルデやイゾルデとしての経験も豊富なだけにその圧倒的な声量といい「愛の死」は貫禄充分だった。(5月2日、日本橋劇場)(浅岡弘和)

Rating
(3/10)
User Rating
(2/5)
Media Type/Label
Technical Specifications
1920×1080, 2.2 Mbit/s, 4.24 GByte (MP4)
Remarks
In-house recording
A semi-staged prduction
Version for chamber orchestra